若おかみは小学生!感想

終わった後の感情としては決して気持ちのいいものではなかった。素晴らしい作品であることには違いない。

 

アニメ的誇張、幽霊など幻想入り混じる映像でありながら、登場する人間ひとりひとりから、感情・バックボーンから現れる動作の必然性、エネルギー保存の法則のように感情が影響を受け移り変わっていく様子は登場人物を血肉が通っている存在にしていて素晴らしかった、人間を描いていたと感じた。完璧だと思う。

 

おそらく私があまりいい気持ちではない理由は、丁寧な描写の積み重ねだからこそ必然的で、そしてそのベクトルが喪失を描くことに向けられているからだろう。

好きなシーンは多くあるのだが、それ以外の幸福的描写は全て喪失とのコントラストのために存在しているようで、私の中で悲しい作品としてカテゴライズされている。

 

このとき思い切り涙をボロボロと流すことができたなら、泣くこと自体によるストレス発散作用によってスッキリとした気持ちで幕を下ろせただろう。

しかし私は泣くこともできなかった。親しい人の死、喪失。私の中に共感できる部分がなかったのからなのかもしれない。目の前で泣くおっこの姿が網膜から受光して私の心と体をすり抜けていってしまうのだ。

 

私にはこの作品を受け止める受け皿がなかった。